「親父の香り」(韓国文芸雑誌「良い考え」3月号掲載作)

2007年の忘年会が終わった。
入社してばたばたしてたらもう2007年は暮れようとしていた。
スーツが嫌いでスーツで通う会社はいやだと思ってたのに、スーツも硬い靴ももう十分慣れてきた。
過ぎ行く年を思い返し、新しい一年に対する期待感を持って・・ 焼酎2杯にもう真っ赤になってふらふらしながらもいろんなことを考えながらてくてく家に帰ってきた。
帰ってきたら親父はもうほぼ毎日続いている忘年会に今日もぐたぐたになって部屋にどろの様に寝ていて、お袋はいつものように居間のソファーでTVをつけっぱなしにして眠っていた。

そーと部屋に入ってスーツを脱いでその場に、私はひとりでぼんやりと突っ立ていた。いろんなガラクタでポケットがぎっしり詰まっているスーツ、そのスーツからきつく漂ってくる焼肉の匂い、そして、朝剃っても夜になるとすぐがさがさ伸びているひげ・・ 社会人になってたかが1年ちょっとだけど、今の私の姿、自分から漂っていた匂いは子供の頃、記憶の中で強く残っている親父の姿、匂いとそっくりだった。

散々酔っ払っって0時に過ぎて帰ってきて、寝ていた私の顔をがさがさなひげを押し付けて目を覚まさせて、靴下も脱がせてくれっていっていた親父・・ その都度、漂ってきた正体不明の匂いも、そんな父さんも大嫌いだった。そして、小さな手でようやく脱がせたスーツには何かがいっぱい詰まっていて・・奥まで手をいれて取り出してみたら分厚い財布、鍵、ガム、タバコ、ライターなどなど・・ あらゆるガラクタが出てきた。
この一瞬に数年前を思い出してそっと自分のスーツに手を入れてみた。タバコは入っていないけど、当時の親父の財布のように分厚い財布、鍵束、ガム、くずなどが出てきた。
私は数年間の謎がやっと解けたような気がした。その時、正体不明の親父の匂いはまさに焼肉やでついた焼肉の匂い、お酒の匂い、タバコの匂い・・そして家族という重い荷を背負っている一人の家長の香りだったのだ。
まだ新米の会社員の私には家長にもなれず、まだ世の中について何も知らない子供なのだが・・社会人になった今になってはじめてその時、親父から漂っていた匂いが何なのかやっとわかってきた。一生子供でいると思っていた私だから、年をとって親父に似ていくということが不思議なだけだった。私は将来親父のような堂々とした、立派な家長になれるかな??
もう一度奥の間のドアを開いて親父をぼんやり眺めてみた。
もう来年で60、毎日を一生懸命に生きてきたおかげで高校の校長になり停年退職も遠くはない。疲れやストレス、そしてお酒のせいで赤くなっている顔、いつからか白くなった髪は老いを感じさせるが、親父の香りは子供の頃、親父の靴下を脱がせに行ったとき漂ってきた香り、そのままだった。

親父にそっくりになっていく息子が静かにドアを閉めながらそっとささやく。

「父さん、愛しています・・」

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