BTSも行く韓国軍隊:上等兵時代④ サッカーさえ上手なら軍隊生活は万事順調

2014年1年間、文芸雑誌「文芸思潮」で「現代徴兵の青春―韓国の軍隊、その793日間の記録―」として連載されました。

誰よりも波乱万丈だった僕のリアルな軍隊の話をさらけ出します。

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軍隊生活が始まる

2月 5日
「今日は遂に決戦の日!奇跡の褒賞休暇を手に入れるのか!!待ちに待った部隊のサッカーリーグ決勝戦が今日の午後にある。

先月の準決勝で1ゴールを決めた後、ゴールキーパーと衝突、壮烈に戦死した僕。一ヶ月近くギブスをしていたのに決勝戦が何回か延期されたおかげで、今日の試合は何とか出場できそうだ。

決して上手とは言えない実力に加え、脚も丈夫じゃないから、ろくに走れるか心配だけど、昨日の練習試合では何とか走れた。

主力メンバーが除隊、休暇中でいなくなり、優勝できるかは疑問だけど、手に届きそうな休暇を考えるとドキドキ、ワクワクしてしょうがない!」

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今振り返ってみると、2年2ヶ月の軍隊生活はまるで一晩の夢、一本の映画のように感じる。

映画で記憶に残る様々な名シーンがあるように、軍隊生活中に起きた様々な出来事が頭に深く刻まれていて、目を閉じればいつでも走馬灯のように目の前に浮かび上がる。

12月21日の夜のことも、13年が経った今でも鮮明に覚えている。9月17日、新兵訓練所に入所し、6週間の新兵教育を修了した僕は、つらい訓練を共に勝ち抜いた同期と涙でお別れし、バスに乗せられ、どこかに移動した。

いよいよ残った2年余りの軍隊生活を過ごす自分の部隊に配属されるのだ。

部隊に配属、最初に聞かれること

「どんな先輩に会えるのか、どんな上官に会えるのか、自分はどんな仕事をするのか、どんな環境なのだろうか・・・」等々、何もかもが不安で、まるで本当の戦場に放り込まれるように緊張していた。

幸いにも僕が配属された部隊は北朝鮮と対置している休戦線からは80kmほど離れた所。しかしながら、戦争ともなればソウルと首都圏を守る、割と前方部隊。それに訓練と規律が厳しいことで有名な機械化部隊だった。

ある田舎の山のふもとに位置している部隊に着いた時には、もう辺りも真っ暗な夜の8時。その時12月と、既に大雪と共に気温は氷点下まで下がる寒さと、真っ暗に広がる闇は、これから始まる、辛く過酷な生活の兆しのように感じ、恐怖で両脚はガクガクしていた。

遂に自分が生活する部隊員との初対面の時間、みんなが鬼のように見えて怯えていた僕に最初に飛んできた質問は名前も出身地も歳でもなかった。

「お前、サッカーうまいか?」

完全に滅入った声で「少しだけできます・・・」と答えると、「おっ!よし、明日テストするぞ!」と言われた。「この部隊って陸軍体育部隊のサッカーチームだったっけ?」と僕は一瞬戸惑っていた。

軍隊を経験した沢山の韓国人男性だったら共感するだろう。僕が先輩になって部隊に配属してきた新兵に対し、最初に聞いたことももちろん「サッカーうまいか?」だった。

軍人にとって部隊に配属してきた新兵に対して最大の関心事は「サッカーができるか否か」だったのだ。なぜ韓国の軍人にとってサッカーはそんなに大事だったんだろうか?

部隊のサッカー大会の熱気はワールドカップ以上

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軍隊生活は第2部で語った通り、まさに「休暇による、休暇のためのもの」。どんな手を使ってでも褒賞休暇を掴み取るために必死だった。

部隊では部隊長、中隊長などの指揮官の裁量によって、基本的な定期休暇に加え、様々な褒賞休暇制度を設けていた。

大きな訓練が終わったら誠実で優秀な結果を出した部隊員に、射撃訓練後、一位を取った部隊員に、正月のような記念日に歌やダンス大会などを催し、参加して入賞した部隊員に・・・

様々な褒賞休暇の取り方があったが、みんなが最も注目するのはサッカー大会だった。

余暇時間にあまりやることがない軍隊で、全国60万軍人の主な趣味はサッカー!部隊ではいわゆる「グンデスリーガ(軍隊+ドイツのサッカーブンデスリーガの合成語)」という言葉があるくらい、年中様々な規模のサッカー大会が開かれ、優勝すれば選手だけでなく、小隊員全員に夢のような褒賞休暇が与えられた。

サッカーが上手な新人選手(新兵)が活躍してくれれば、何もしなくても休暇を掴み取ることができたのだ。まさに「サッカーさえ上手なら軍隊生活は万事順調」になるわけだった。

さて、僕は部隊員の期待に応じて大会で活躍でき、順調な軍隊生活を送ることができたのだろうか?

サッカーさえ上手なら軍隊生活は万事順調

「サッカーさえ上手なら軍隊生活は万事順調」という名言を既に知っていた僕は、そんなに上手ではなかったものの、自分の休暇と部隊の先輩から愛されるために死ぬ気で大会に臨んだ。

その結果、準決勝で1ゴールを決めた後、ゴールキーパーと衝突、壮烈に戦死。

決勝戦に進んだチームは優勝して、まさかの小隊全員が奇跡のような褒賞休暇を手に入れることができた。

さらに僕は膝の靭帯損傷により患者になり、1ヶ月間全ての訓練から外され、神様の恵みまで受けることになったので、僕にとってそのサッカー大会は一石二鳥の喜びを与えてくれたのだ。

結婚できるか心配だけど、もし将来結婚して息子が生まれてきたら、僕は必ずサッカーを教えるつもりである。

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これが軍隊時代、栄光を共にしたサッカーシューズ。横に「1中隊 HQ(本部小隊)ストライカー」と書いている。

こちらの記事もご参考にしてください↓
BTSも行く韓国軍隊:上等兵時代⑤ 北朝鮮より怖いもの、それは雪!


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