「もしもし~予備軍のジョンヒョさんですか?こちら兵務庁ですが・・ 電算上のエラーでジュンヒョさんの兵役の記録がなくなりました。大変申し訳ありませんが、明日まで再入隊してください。」
「えええ?どういうことですか?私2年2ヶ月間の兵役を済ませましたよ」
「すみません。明日までお願いします」
「(涙まみれになり)そんな・・ そんな・・・(泣き喚きながら)だめ~~!」
「ほら!大丈夫?何か悪い夢でも見たの?冷や汗までかいちゃって・・ 今日、予備軍訓練の日でしょ?さっさと準備しなさい!」
「フ・・・ 夢だったのか・・・・」
予備軍訓練の日の朝、悪夢からやっと覚めました。その悪夢とは除隊した韓国の男性なら一度は見てしまうという再入隊する夢だったのです。地獄から救われたような感じで、たんす深くに入れておいた軍服を取り出し、予備軍訓練に行く準備をしました。
ここは家の近くの予備軍訓練場。丈夫な身体と強い精神力で愛する家族と彼女のために国を守っていた往年の勇士達が集まりなおしました。
「先輩、先輩~これから射撃の練習があるので並んでください。お願いします。」
訓練助敎の予備軍部隊の部隊員の一等兵は不良グループのような予備軍の先輩の前でてこずっていました。
私をはじめ、体丈夫な韓国の軍人として名誉に除隊(兵役を終えること)したあいつら・・ 一生、愛する家族と国家のために軍人精神で一所懸命生きていくと心を決めて除隊した闇のやつらが一年ぶりに集まりました。
しかし、口にはタバコ、乱れた軍服、面倒くさげにあくびばかりしている予備軍の格好には軍隊時代の姿、気合いはちっとも見当たりません。
そうです。除隊したからといってそれで兵役が終わるわけじゃありません。2年間の兵役が無事に終わりますと予備軍に自動編成され、一年に36時間の予備軍訓練を受けなければいけません。その後には40才まで民防衛隊員になって一年間8時間の訓練があります。

最近、韓国では予備軍制度を廃止しようという声が高まっています。
北朝鮮との平和ムードが深まることにともない、予備軍訓練も形だけで行っており、ちゃんとした予備軍訓練のカリキュラムもないまま時間つぶしで行っているからです。
学生は授業、会社員は仕事などでそれぞれ忙しい上に、26ヶ月間も軍隊で苦労し、やっとその闇から抜け出た彼らにはこの軍服を着ることだけでも軍隊でのいやな思いが蘇ってくるようで一日が一週間のように感じてつらいわけです。
左手はポケットに、右手ではタバコぷかぷか、そして、みんなむっとした顔・・・
軍隊時代は殺したいほど怖くていやだったですが、今はただの町内のおじさん、駆け出しの後輩に過ぎない教官と訓練助敎の言いつけに鼻で笑いながら予備軍達の一日はそういうふうに経ちます。
訓練が終わり、さっきまでまったく元気のなかった予備軍達がまるで除隊した日のように元気になって家に戻っていく姿をみながら私は思わず笑いが出てしまいました。
「あ~あの時は硬い軍人精神を持った誇らしい韓国の軍人、韓国の息子だったのにな」と・・
しかし、私はよく知っています。どんな試練も耐え抜ける強い精神力、たくましさ、男らしさはきっと軍隊から学んだ人生の宝物ということを・・・