【韓国軍隊:兵長時代】6. 闇の奴から一般人に

(この記事は、2014年1年間、文芸雑誌「文芸思潮」に「現代徴兵の青春―韓国の軍隊、その793日間の記録―」というタイトルで連載されました)

——————————————————-

Part4 :兵長時代

「闇の奴から一般人に」
2003年 10月 26日
「今日が本当に10月26日なのか・・・本当に俺が明日、末年休暇(除隊直前に与えられる20日間の休暇)に出るのか・・・この日が来るとは・・・ 昔の日記を読んでみると笑いしか出てこない。
久しぶりの休暇で、まるで初休暇に出かける二等兵のように胸がドキドキする。家族と友達の目にちゃんと成長した男に映るのかという心配もあり・・・ 今夜ちゃんと眠れるかな。
10日も延期されちゃった末年休暇、幸いにもそのせいで訓練に巻き込まれる悲劇はなく、休暇に出られるようになった。よっしゃ~!家に行こう!!」 

 

「ジョンヒョ兵長!ジョンヒョ兵長!!起きろ!!!北朝鮮が戦争を起こした!非常事態だ。今から戦闘態勢にに入るぞ!」
「えええええ!僕、今日、除隊日ですよ」
「戦争が起きたんだ!除隊できると思ってるのか!早く出動準備しろ!!」
「(涙まみれになり)そんな・・ そんな・・・(泣きわめきながら)だめ~~!」

「パク兵長!パク兵長!大丈夫ですか?何か悪い夢でも見ましたか?」
「あ・・あ・・・ 夢だったのか・・・・」

除隊が目前に迫ってきた兵長なら一度は見てしまうというその夢。除隊日に戦争などの非常事態が起きて、除隊できなくなるというその恐ろしい夢を、僕は除隊日の朝、見てしまった。しかし、「おめでとうございます。今日はパク兵長の除隊日です!」という後輩のお祝いの声に目が覚め、幸いにも戦争は起きることなく、夜は明け、除隊日の朝が訪れていた。

軍隊という塀の中で二回の夏と冬を過ごし、そして三回目の冬だった2003年の11月19日・・
この日は一生忘れることのできない、僕の除隊の日だった。2年2ヶ月ぶりに、闇の奴から再び一般人になる歴史的な日だったのだ。

韓国の軍隊には部隊ごとに無事に兵役を終えた先輩のための簡単な儀式がある。
朝早くから忙しいのに、その日だけは2年間一緒に暮らしてきた小隊員みんなが正門まで見送りに来てくれる。一等兵、二等兵の時に、除隊する先輩のためにと前日の夜、殴られながら練習していたその儀式、遂に僕がその儀式の主人公になる日が近づいてきたのかと思うと、胸がいっぱいになった。

*訓練所の同期

まず、一列になった小隊員は大きな声で敬礼をし、部隊歌を歌ってくれる。じっと目を閉じて歌を聴いた後、僕はみんなと握手をした。特に叱ったり怒鳴ったりした後輩には、すまない気持ちが先立って涙が出てしまった。
「今までゴメン、本当にゴメン。お前が憎かったわけじゃないんだ・・・」僕はそう言いながら後輩の手をギュッと握った。すると後輩は「分かっています。先輩のおかげで強くなりました。」と言ってくれた。

そして、除隊する僕の明るい未来や健康を祈りながら、力いっぱい胴上げをしてくれた。僕は初めての胴上げだったからちょっと怖かったけれど、青い空を飛んで雲でも掴めそうな気分だった。
そして、2年間一緒に泣いたり笑ったり苦労したり、時にはお荷物になったり、支えになってくれて、情が移った部隊員達とギュッと抱きしめ合った。入隊の日、心を込めて自分を抱きしめてくれた父のように・・・

「先輩なら絶対成功しますよ!」
「先輩、絶対連絡するんで焼酎でも飲みましょう!絶対ですよ!」と言ってくれた。嬉しさ、ありがたさ、すまない気持ち、言葉にできない色々な感情が混ざり合い、涙が止まらなかった。
最後に正門を出て社会への新しい一歩を踏み出した僕に、みんなはタメ口で叫んでくれた。

*戦闘車操縦手の仲間達と・・・。みんな元気にしているのかな!?

「オ~イ!成功しろよ~!」
「今までお疲れ!自由になれ~!」
「気分どうだ~!俺ももうすぐだ~!また会おうぜ!!」と・・・。

僕は「ハハハ~何がもうすぐだ!もうすぐ戦争が起きるぞ~!」と言いながら、力いっぱい手を振った。
ふと2年前、6週間の訓練が終わり、この部隊に入ったばかりの一等兵の自分を思い出した。「どんな人に出会うのだろう?2年後、無事に除隊できるのだろうか?俺、厳しい訓練をうまく成し遂げられるだろうか?」と何もかもが不安だった。

苦しくて泣いたり、部隊員みんなと訓練地のテントの中でワールドカップを見ながら歓呼したり、彼女に振られて脱営を決心したり、訓練で一位になり優秀操縦士に選ばれたり・・・いろんなことがまるで走馬灯のように駆け巡った。

「2年2ヶ月、お前、マジで頑張ったな!お前には明るい未来が待っているぞ~!さあ、行くぞ!」と言いながら、両手をぐっと握って走り出した。

2003年11月26日。僕の一生忘れられない除隊の日。もう11年も前のことだが、まるで昨日の事のように鮮明に覚えている。 雲でも掴めそうな、世界が全て自分のもののようだったあの日・・・あの日のことを思い出すと「俺は今本気で一生懸命に生きているのか」と、自分自身に問いかけざるを得なくなる。

除隊日までを待ち焦がれ、除隊さえすれば何でもできそうだと、自信満々に社会に戻ってきたが、いざ除隊すると、軍隊時代が楽だったな!社会は遥かに過酷で険しい所だな!と当時を懐かしく思うようになる。就職難、経済難、非正規雇用問題、結婚問題・・・世界のどの国よりも競争が激しい国、韓国。80万ウォン世代(どんなに頑張っても月収が80万ウォンに留まる)、3ポ世代(恋愛、結婚、出産を諦める)という言葉からも分かるように、厳しい現実の中、それでもくじけずに戦っていけるのは、軍隊時代の貴重な経験があったからではないかと僕は思う。

今夜は除隊の日、あらん限りの声でお別れの歌を歌ってくれた部隊員に電話でもしてみようかと思っている。大変だった兵役を無事に乗り越えたやつらだから、きっと元気にしているだろうけど!

*社会生活、大変だろう?頑張れよ、戦友よ!

 

【END】

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。